
最適なコブのサイズ・質感、
女性に向けたハンドル形状を追求して
そもそも、なぜ歯ブラシにコブなのか? 渡部先生の目的は、頬部の咬筋(こうきん)や口輪筋(こうりんきん)を内側から刺激することで、唾液腺を活性化することにあった。唾液は、虫歯・歯周病の予防、消毒殺菌、消化作用、咀嚼・嚥下機能の維持など、「天然の万能薬」とも呼ばれるほど、重要な役割があることが近年知られるようになっている。
さらに、頬部を内側からマッサージすることで緊張した筋肉がほぐれ、顔のむくみやほうれい線の軽減などへの美容的効果まで期待できるのだ。
しかし、それには最適なサイズのコブが必要だった。谷口たちは最初、渡部先生自作のサンプルより少し小さめで 柔らかいスーパーボールでサンプルを作った。4月23日のことだ。しかし、渡部先生から「これでは刺激が弱い」とダメ出しされてしまう。コブが小さければ歯は磨きやすいが、マッサージ効果が弱くなってしまう。かと言って大きすぎれば歯が磨きにくくなる。最適なサイズは微妙なところにあった。そこで谷口たちは、自らの口腔内で感触を試した大小5パターンの試作品を先生に送った。そして、渡部先生から「これですよ!」と合格をいただいたのが、現在のコブのサイズである。
また、コブの質感も重要だった。谷口たちは柔らかい質感を求めたが、そのような素材だとホコリが付きやすくなる弱点があった。口腔内に入れる製品である以上、それは絶対にあってはならない。ホコリが付きにくい素材を選ぶのにも苦労した。

ハンドルについても、渡部先生にはこだわりがあった。この商品は「美容歯ブラシ」であるために、女性に好まれる デザインでなければならないのだ。
「コブの刺激が弱い」と言われた最初の試作品は、ハンドルも不合格であった。渡部先生自作のサンプルで使用されていた歯ブラシのハンドル形状に倣ったのだが、「真っ直ぐで安っぽく見える」との指摘が入ったのだ。次に、ハンドルにカーブを付けてデザイン性を高めると、「量産品のように不透明で、まだ安っぽい」との返答。実は、渡部先生はご家族や歯科医院の女性スタッフ、患者様にもリサーチをかけていて、女性の率直な意見をクリエイトに伝えてくれていたのだ。こうして、クリアな素材を使用して側面にカットを入れた、角度によってキラキラと光輝くハンドルが生まれたのだった。

パッケージ台紙デザインラフの数々
同時にパッケージも作成しなければならない。商品名は、渡部先生がテレビ出演したときから付けていた愛称「キャンディー」をいただいて、「キャンディー美容歯ブラシ」に決定した。
台紙デザインにはデザイナー数名が名乗りを上げてくれ、数パターンのラフデザインが集まった。それぞれ特徴的であったが女性目線で考慮した末1点に絞り、ブラッシュアップしていった。