オーラルケア・プロダクトで
若さと美に貢献していく。
オーラルケア・プロダクツのスペシャリスト集団であるクリエイト。
自社ブランドも、OEM・PB製品も、さまざまなドラマを経てお客様の
お手元に届いています。
その中の一つ、「美容歯ブラシ」という新たなジャンルにチャレンジした、
「COBRUSH」の開発物語をご紹介します。
出会い
それは、1本の電話から始まった。
2015年2月18日、オーラルケア・プロダクツを企画開発するスペシャリスト集団、株式会社クリエイトの代表取締役・谷口善紀は、懇意にしている経営者から「今日のテレビ見たか?絶対谷口さんのところが作るべきやで!」と、経済番組の人気コーナーを見るように勧められたのだ。谷口は、早速動画を社員とチェックした。そこには、切ったスーパーボールをボンドで歯ブラシに付けた自作サンプルを持って、「これを商品化してくれる企業を募集します」と話す男性がいた。それが、歯科医であり、発明家としても有名な渡部英樹先生その人だった。
渡部 英樹先生
渡部先生自作のサンプル
「これは面白い!」。製品化への情熱が一気に燃え上がった谷口は、早速渡部先生にコンタクトを取った。数回電話とメールのやりとりをした後、3月4日に担当社員とともに渡部先生が歯科医院を開業する愛媛県へと赴いた。自社製品を手に企画開発力の高さを説明して製品化への熱意を伝え、先生自作のサンプルを手に帰阪。しかし、今までに見たこともない構造の歯ブラシである。1週間社内で開発計画について練り上げ、「できる!」と確信を持ち渡部先生にそれを伝えたその瞬間、クリエイトの「コブ付歯ブラシ」開発プロジェクトがスタートした。
実は、渡部先生のところには、クリエイトを含め5社の企業が商品化の名乗りを上げていた。クリエイトを選んだ決め手は開発力の高さはもちろんのこと、「愛媛まで足を運んでくれた企業はクリエイトさんだけだったから」だという。この渡部先生とクリエイトの情熱のタッグが、開発の推進力となっていく。
開発
そもそも、なぜ歯ブラシにコブなのか?渡部先生の目的は、頬部の咬筋(こうきん)や口輪筋(こうりんきん)を内側から刺激することで、唾液腺を活性化することにあった。唾液は、虫歯・歯周病の予防、消毒殺菌、消化作用、咀嚼・嚥下機能の維持など、「天然の万能薬」とも呼ばれるほど、重要な役割があることが近年知られるようになっている。
さらに、頬部を内側からマッサージすることで緊張した筋肉がほぐれ、顔のむくみやほうれい線の軽減などへの美容的効果まで期待できるのだ。
しかし、それには最適なサイズのコブが必要だった。谷口たちは最初、渡部先生自作のサンプルより少し小さめで柔らかいスーパーボールでサンプルを作った。4月23日のことだ。しかし、渡部先生から「これでは刺激が弱い」とダメ出しされてしまう。コブが小さければ歯は磨きやすいが、マッサージ効果が弱くなってしまう。かと言って大きすぎれば歯が磨きにくくなる。最適なサイズは微妙なところにあった。そこで谷口たちは、自らの口腔内で感触を試した大小5パターンの試作品を先生に送った。そして、渡部先生から「これですよ!」と合格をいただいたのが、現在のコブのサイズである。
また、コブの質感も重要だった。谷口たちは柔らかい質感を求めたが、そのような素材だとホコリが付きやすくなる弱点があった。口腔内に入れる製品である以上、それは絶対にあってはならない。ホコリが付きにくい素材を選ぶのにも苦労した。
「キャンディー美容歯ブラシ」ができるまでのハンドルとコブの変遷
ハンドルについても、渡部先生にはこだわりがあった。この商品は「美容歯ブラシ」であるために、女性に好まれるデザインでなければならないのだ。
「コブの刺激が弱い」と言われた最初の試作品は、ハンドルも不合格であった。渡部先生自作のサンプルで使用されていた歯ブラシのハンドル形状に倣ったのだが、「真っ直ぐで安っぽく見える」との指摘が入ったのだ。次に、ハンドルにカーブを付けてデザイン性を高めると、「量産品のように不透明で、まだ安っぽい」との返答。実は、渡部先生はご家族や歯科医院の女性スタッフ、患者様にもリサーチをかけていて、女性の率直な意見をクリエイトに伝えてくれていたのだ。こうして、クリアな素材を使用して側面にカットを入れた、角度によってキラキラと光輝くハンドルが生まれたのだった。
同時にパッケージも作成しなければならない。商品名は、渡部先生がテレビ出演したときから付けていた愛称「キャンディー」をいただいて、「キャンディー美容歯ブラシ」に決定した。
台紙デザインにはデザイナー数名が名乗りを上げてくれ、数パターンのラフデザインが集まった。それぞれ特徴的であったが女性目線で考慮した末1点に絞り、ブラッシュアップしていった。
パッケージ台紙デザインラフの数々
生産
1本1本手作業でハンドルを取り替えて植毛する
こうして、谷口たちはいよいよ「キャンディー美容歯ブラシ」生産へと駒を進めた。もちろん、彼らにとって「コブを付ける」という工程は初めてのことだ。通常の歯ブラシなら、ハンドル成形をしてから植毛、最後に包装となる。「キャンディー美容歯ブラシ」の場合はどうか?
「植毛後にしては?」
「あかん、万が一外れたら危険や」
起こりうるあらゆるパターンを想定して、まず成形時にコブを付けて、その後植毛することにする。しかし、コブがあるために普通の歯ブラシにはない製造方法を模索しなければならなかった。
成形工程では、コブの芯となる半円が飛び出たハンドル成形後に、芯をゴムの素材で覆う工程が発生した。
植毛工程についても、既存の全自動ラインを使用することはできない。植毛時に下を向くコブを固定する器具を用意しなければならなかった。
そのため、歯ブラシ1本ごとに「キャンディー美容歯ブラシ」を人の手で取り替えながら植毛しなければならない。全自動ラインの5分の1以下に効率がダウンするなど、非常に時間とコストがかかる。しかし、理想の製品に仕上げるために、常にクオリティを追求するのがクリエイトである。そこは一切の妥協を許さなかった。
製品ができあがれば包装工程となるが、谷口たちはここでも苦労した。パッケージ自体は歯ブラシによく見られるブリスター包装だが、コブが付いているがために隙間があると中で商品がくるくると回ってしまうのだ。コブとハンドルとの間にできる限り隙間が空かないよう、ブリスターの金型を調整しなければならなかった。
こうして「キャンディー美容歯ブラシ」は次々と生産されていった。ここでようやく、「キャンディー美容歯ブラシ」を世に出す準備が整ったのだ。季節は夏になっていた。
誕生
そして2015年12月、ついに「キャンディー美容歯ブラシ」が市場に出ることとなった。ドラッグストア・人気総合ディスカウントストア・有名大型雑貨店などに陳列され、その光景に谷口たちは胸を熱くした。
翌年5月には関西ローカルの人気番組にて、「大ヒット超便利グッズ」として紹介される。そこからお問い合わせが殺到し、事務方の女性陣はその対応に追われ、Amazonの在庫もほぼなくなった。
早速海外にも進出した。上海の展示会に出展したところ、ブース前を通りかかった女性たちが「美容歯ブラシ?」と興味をそそられ、サンプルが欲しいという要望が相次いだ。販売するつもりはなかった谷口たちは約100本の「キャンディー美容歯ブラシ」しか用意していなかったが、「どうしても」という声に急遽展示即売会を開いた。すると、たった1日で用意した数の半分以下に減ってしまうほどの売上を上げた。この反響に手応えをつかみ、中国での販路に希望を見いだす。
アメリカのテレビショッピングからもお声がかかったが発売直後で実績が無いため、残念ながらこの話は流れてしまった。
だが、谷口たちは「『キャンディー美容歯ブラシ』なら世界に通用する!」と、未来へと一筋の光明を見いだしたのだった。
しかし、肝心の国内実店舗での売上が振るわない。最新の最善への追求を怠らない谷口たちは、早速リニューアルに乗り出した。
まずは発売後すぐに毛先の変更を検討。「キャンディー美容歯ブラシ」は長短の毛が混在する「片テーパー」で、歯と歯ぐきへの当たりが若干きつめだった。それを、毛先をそろえた「両テーパー」に変更し、優しい磨き心地になるようにした。
次に、カラー展開に着目した。ピンク・オレンジ・ブルーのラインナップのうち、ピンクだけが売れて店頭にはオレンジとブルーが残る現象がいくつもの店舗で見られたからだ。早速オレンジとブルーを上品なパープルと淡いイエローに入れ替えると、売上の偏りは解消された。しかし、まだ動きが鈍い。
「パッケージじゃないか?」
初代「キャンディー美容歯ブラシ」のパッケージは毛が「やわらかめ」のピンクと「ふつう」のブルーの2種だ。商品同様にブルーが女性に好まれていないと考えた彼らは、パープルに変更した。
これらのリニューアルを、発売から約1年でやり遂げた。
残念なことに、その後も売上は伸び悩んだ。
「キャンディー美容歯ブラシ」は1本売りだったため、店舗のフックにかけると他の歯ブラシの中に埋没してしまう。さらに、お客様がその存在に気づいても、パッケージのキャッチコピーだけでは効果のほどが伝わりづらいため、なかなか購入までのアクションを起こしてもらえなかった。
谷口たちは商品には自信を持っていたから、なんとか展開していきたいと考えていた。そんな頃、ある代理店との出会いが「キャンディー美容歯ブラシ」の販路について大きく舵を切るきっかけとなる。
ドラッグストアの店頭。「歯みがき」「ほうれい線」の大きな文字が目を引くPOPとともに
片テーパー(左)と両テーパーの毛先
都営三田線のマタニティタイアップ広告
進化
美容歯ブラシとして洗練された
パッケージの「COBRUSH」
「この歯ブラシ、美容サロンで販売されていたら面白くないですか?」
ある代理店がそう言ってコンタクトを取ってきたのは、2016年11月のことだった。谷口たちも「これはいける!」と直感し、以後大事なパートナーとなる。
もちろん、その時点でクリエイトには理美容業界のチャネルがない。約1年の準備期間を経て理美容業界へと乗り込んだ。
その間、パートナーの代理店は業界の流通経路をリサーチしていた。理美容業界は理美容専門の卸売業者を頂点に、地域のディーラーが間を取り持って各サロンに商品を届けるという階層構造になっていた。
「一番大きなところを攻めよう」
谷口たちは意気揚々と日本一の理美容卸売業者にアタックした。しかし、「キャンディー美容歯ブラシ」は単価が約400円だ。歯ブラシにしては高級品だが、理美容系の商材として見れば激安となる。
「そんな安いもの、取り扱えないですね」
谷口たちの熱意は、たった一言でシャットアウトされてしまったのだ。
幾度もトライし続けるも、やはり取り扱いには至らなかった。
「どうしたらええんや」
いろいろ考えたあげく、毛の形状をより高級感を醸し出すスパイラル構造に変更した。さらに、3本セットで販売し、単価を上げる作戦に出た。スパイラル構造には歯垢を絡め取る効果があり、機能性も向上した。
3本セットにしたのは、女性ならサロンには3カ月に一度は確実に行くとの読みからだ。1本あたりの想定耐久日数を約1カ月と想定した場合、一度購入すれば次にサロンで髪を整えるタイミングで3本目の交換時期となり、リピーターを生み出すという戦略だった。
3本セットにするにはパッケージも変更しなければならない。商品ロゴもパッケージも、より美容に敏感な女性を意識したスタイリッシュなデザインにバージョンアップした。
そして2018年5月、クリエイトの新たな未来を拓くこの商品は「COBRUSH(コブラシ)」と命名され、再びデビューを果たしたのだった。
「キャンディー美容歯ブラシ」から「COBRUSH」への変遷
紆余曲折を経て、遂に「COBRUSH」で理美容専門卸売業者との契約にこぎつけたクリエイトだったが、理美容業界市場の動きは鈍かった。膨大な数のアイテムから地方のディーラーがセレクトしてくれるとは限らないからだ。
そこで、2019年冬、試験的に北海道2000店舗と山口県600店舗の美容サロンへ委託販売することにした。直接美容サロンとユーザーへアピールするという、逆転の発想だった。すると、瞬く間に数千セットが売れた。
「需要はある!」
メーカーとしては、販売後に回収となる委託販売は痛手だが、確かな手応えを感じられたのは大きな成果だった。
その後も、委託販売は「COBRUSH」にとって重要な販路となっている。
メディアでの関心も高まっている。
2019年には、美容系雑誌売上No.1を誇る『美的』(小学館)とのコラボレーションが実現。9月に理美容専門卸売業者の展示会に出展し、関係者に広くアピールした。
また同年11月には、全国ネットの朝の情報番組にて「進化形♪歯みがきグッズ」の一つとして紹介された。「COBRUSH」の知名度アップに貢献し、一気に注文が舞い込んだ。
さらに、幅広い年齢層の女性のカリスマ的存在であるヘアメイクアップアーティストの方が、インスタグラムで「COBRUSH」を紹介。有名メイクアップアーティストがプロデュースするコスメブランドプロデュースのコブ付き美容歯ブラシを2020年秋に限定発売したことも後押しして、美容に関心の高い女性への認知度が飛躍的にアップしている。国内の有名大型雑貨店への「COBRUSH」としての販売再開や、パッケージをオリジナルに変更したある大手の「協同組合」での販売も始まる。「キャンディー美容歯ブラシ」の発売当初から中国にて軌道に乗っていた海外展開は、台湾・香港・韓国などにも広がり、近い将来には欧米も視野に入れている。「女性の美を求める心に国境はない」。全世界の女性に向けて、「COBRUSH」の美へ貢献する旅はまだ始まったばかりである。
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